身体介護の基本とされてきた「3大介護」の変化

3大介護とは、生活に欠かせない身体介護を表した言葉である。具体的には、食事・排泄・入浴を指している。これらの3つは、介護職員としてまず習得すべき介護技術であり、2000年代初頭ごろまで特に重視されてきた。近年もこれらが軽視されているわけではないが、現在では3大介護だけに着目しないようにしようという考え方が広まっている。

その考え方は、3大介護という言葉自体が、「身体介護をスムーズに行うことこそが介護である」という偏った考え方を生んでしまう懸念から生まれたとされている。もちろん、食事・排泄・入浴のケアを行うスキルが重要であることは言うまでもない。

ただその一方で、高齢化が進み介護が多くの人にとって身近な存在になる中で、身体面だけでなく、精神面や社会面を重視した介護の必要性が認識されている。利用者の幸せな生活を支えるためには、単に栄養を摂り清潔な身体を維持するだけでなく、日々の楽しみを提供したり、コミュニケーションを図ったりすることが大切だと考えられるようになってきたのだ。

そのため、現在では利用者の価値観や趣味などを調べ、それぞれが持つ背景を意識した介護が求められている。例えば、3大介護の一つである食事介助の際も、利用者の好き嫌いや、食べるペースに合わせて、楽しく会話しながら行うことが理想とされている。とはいえ、現実的には介護職員の慢性的な不足などの要因もあり、理想通りにはいかないという場面も多いかもしれない。それを踏まえ、今後は人材確保を促進し、介護環境を整えて、精神面や社会面からのアプローチを展開していくことが課題となっている。